近年, 様々な有効性が注目され, 新たな産業的利用法が探索・開発されているカキ渋の熟成中の発酵過程における成分変化を, 特に非タンニン成分に注目して調査した.未熟果実における'天王'の可溶性タンニン含量は'田村'の1.3倍であった.調製後6か月のコロイド滴定値およびボーメ度についても, '天王'は'田村'より高い値を示した.熟成カキ渋中の糖含量は調製後3日では, '田村', '天王'ともに, フルクトースがグルコースより多く, スクロースは認められなかった.その後, 両者ともに調製後8日にかけて糖含量は急減し, '天王'は8日, '田村'は15日で全く認められなくなった.グリセリンは, '田村', '天王'ともに, 調製後8日で確認できた.その後, '天王'ではグリセリンは認められなったが, '田村'では調製後6か月まで確認された.カキ渋の熟成において必須である発酵が最も盛んに行われた期間は, 調製後3日から29日の間であった.その発酵生産物である熟成カキ渋中の有機酸として, 果実中に存在しない不揮発酸であるコハク酸, 乳酸および揮発酸である酢酸, 酪酸, プロピオン酸を確認した.'田村', '天王'ともに, 調製後0日から3日にコハク酸・乳酸が, 15日から29日には酢酸が急激に増加した.'天王'だけに認められた酪酸の急増期は調製後8日から15日であった.これらの5種類の有機酸は, それぞれの有機酸発酵の過程で生成されたものと考えられ, 調製後6か月における総含量は, '田村'は'天王'の1.4倍であった.代表的なカキ渋の原料とされている'天王'と'田村'の違いとして, '天王'から得られたカキ渋はタンニン含量が高く, '田村'からは有機酸含量が高い特性を持つカキ渋が得られることが明らかとなった.
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