山形県内のナラ類の集団枯損被害地で,カシノナガキクイムシの脱出状況と被害木の枯死経過を6年間調査し,カシノナガキクイムシと枯死に関与する特定の菌類(仮称ナラ菌)の動態に関する試験を行って,これらの相互関係を検討した。カシノナガキクイムシは,6月下旬に短期間かつ大量に羽化脱出し健全木に穿入して,8月上旬に被害木は枯死することが確認された。また,羽化脱出初期の時期と枯死に関する時間的経過との問には有意な関係が見出された。ナラ菌伝搬に関する実験と時期別のナラ菌の接種試験の結果から,カシノナガキクイムシは枯死に関与するナラ菌を樹幹内に伝搬し,羽化脱出初期の時期と同様の接種時期にのみ枯死が発生したことから,ナラ類の枯死経過には,カシノナガキクイムシの穿入と伝搬されたナラ菌の樹幹内での動態が関連することが強く示唆された。
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