右冠動脈肺動脈起始異常症はBland-White-Gar.land症候群に比しさらにまれな疾患で,本邦ではこれまで数例の報告をみるのみである.症例は53歳女性.全身倦怠感を主訴に来院。胸写CTR53%,心電図は高電位差を認めた.断層心エコー図では短軸像で拡張した左冠動脈と,大動脈前方に肺動脈主幹部へ連続する右冠動脈と思われる内径8mmの管腔像が描出された.パルスドップラー法では,肺動脈主幹部で収縮期,拡張期を通じて広帯域スペクトルのエコーが記録され乱流が疑われた.
心臓カテーテル検査では,肺動脈圧32/16mmHgと軽度上昇にとどまり,左室拡張終期圧は5mmHgと正常値であった,酸素飽和度は主肺動脈でste
唐
upを認めシャント率34%,肺体血流量比1,54であった.右冠動脈は,拡張した左冠動脈から多数の側副血行路を介して逆行性に造影された.この右冠動脈は著明な拡張,舵行を示しながら心臓の前側面を上行し,血流は収縮期から拡張期にかけ連続性に肺動脈基部にて噴出していた.
本奇形では,成長に伴う肺動脈圧の変化,側副血行路の発達などにより,左冠動脈,右冠動脈相互間の血行動態も変遷する.このような成長に伴って出現する狭心症や心不全などの合併症とともに,生命予後などについても文献的考察を行った.
抄録全体を表示