分娩後の豚11頭から経日的に乳汁を採取し, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を使用して乳汁中の5'-ヌクレオチド (CMP, AMP, UMP, IMP, GMP) 濃度を測定した。同時に供試豚の産子について離乳までの育成状況を観察した。
豚乳中にはCMP, AMP, UMP, IMP及びGMPの5'-ヌクレオチドが検出された。5'-ヌクレオチドの濃度は豚間でばらつきが大きく, 分娩後0日目に総5'-ヌクレオチド濃度が200μmol/100m
l以上の乳汁を分泌する豚 (高ヌクレオチド群) 4頭とその濃度が150μmol/100m
l以下の乳汁を分泌する豚 (低ヌクレオチド群) 7頭の2群に大別できた。高ヌクレオチド群と低ヌクレオチド群のどちらも総5'-ヌクレオチド濃度は分娩後1日目に最大値を示し (それぞれ250±92μmol/100m
l及び102±78μmol/100m
l), その後経日的に減少した。分娩後22日目では, 高ヌクレオチド群と低ヌクレオチド群に有意差はなかった (それぞれ32±22μmol/100m
l及び33±15μmol/100m
l)。なおUMPは, 乳汁中に検出された5'-ヌクレオチドの中で最も高かった。
高ヌクレオチド群の出生子豚で出生時体重が1kg以下の虚弱子豚はいなかったが, 低ヌクレオチド群では出生子豚の約18%が虚弱子豚であった。離乳時までの下痢及び虚弱治療成績では, 高ヌクレオチド群ではほとんど治療を必要としなかったが, 低ヌクレオチド群では高ヌクレオチド群に対し, 子豚1頭当たりの処置回数が下痢治療で約15倍, 虚弱治療で約3倍となった。また, 低ヌクレオチド群の子豚では死亡原因の50%が衰弱死であったが, 高ヌクレオチド群の子豚では衰弱死がみられなかった。これらの結果より, 豚乳中に含まれる5'-ヌクレオチドは, 新生子豚の発育にとって重要な役割を持つことが示唆された。
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