緒言
当院では平成14年4月から院外
処方箋
の全面発行を開始した.医師が処方指示書に記載されている前回処方内容を確認修正後,医事課が処方指示内容を入力し院外
処方箋
を発行する.その際,院内薬局で院外
処方箋
と処方指示書を照合し,問題がなければ,患者に院外
処方箋
を渡す方式で行なっている.又,保険薬局からの院外
処方箋
に対する疑義照会は,院内薬局が窓口となり,担当医師に疑義照会を行ない,保健薬局へFAXにて回答する方式で行なっている.
当院では平成16年3月に「良質で安全な医療を提供する」をキャッチフレーズにISO9001医療マネジメントシステムを導入した.半年毎に医療サービス目標を設定し,医療サービスマネジメントの向上を行なっている.今回,薬局では,『疑義照会率を減少させる』ことを目標に掲げ,検討を行ったので報告する.
現状・分析
1.平成16年12月から平成17年2月の疑義照会内容を検討した.3か月間の外来
処方箋
枚数(A)20,104枚.疑義照会件数(B)96件.疑義照会率(B/A×100)0.48%であった.
2.照会内容を分類した場合,「用法用量に関する疑義」25件,「処方内容と患者認識との相違に関する疑義」24件,「保険適応上の問題」10件,「調剤上の問い合わせ」8件,「患者の変更希望」13件,「形式上の疑義」3件,「前回処方との相違」3件,「禁忌・副作用等の疑い」3件,「重複投与」7件であった.
3.照会内容を
処方箋
記載不備などの「形式上の疑義」以外の事例について,処方監査上の「薬学的疑義」と,患者応対や薬歴照合を通じて生じた「臨床的疑義」に大別した.薬学的疑義は37件(40%),臨床的疑義は56件(60%)であった.
4.「薬学的疑義」のうち,「特定の用法を有する薬品」関連疑義は4件,「投与上限」関連疑義は6件,「製品規格」関連疑義は2件だった.
5.保険薬局からの疑義照会FAXの受診時間と,回答の送信時間の差を疑義照会時間として,時間を計測した.(中央値10分.最大47分.最小1分.n=62)
対策
「特定の用法を有する薬品」,「投与に上限のある薬品」,「製品の規格」について,医師の処方時に認識可能なよう,また,院内薬剤師の監査に漏れがないよう,処方指示書の薬品名の表記に特定の用法・投与の上限期間・製品の規格を各々追加した.
実施
実施は,「製品の規格」については平成17年3月から,「特定の用法を有する薬品」,「投与に上限のある薬品」については平成17年4月からとした.
結果
対策実施後3月の「製品規格」関連疑義は0件であった.4月の「特定の用法を有する薬品」関連疑義は1件,「投与上限」関連疑義は3件であった.
考察
当院の疑義照会率0.48%が,他施設の発表と比べ低いのは,院内薬剤師の処方監査の影響と考える.このことは,疑義照会にかかる10分程の患者の待ち時間減少と,医療過誤防止の面で,医療サービスに繋がる.今回,対策実施後の結果の評価期間が短く充分な結果は得られず,今後の継続評価が必要であるが,今回の対策は,院内薬剤師の意識の向上と医療の標準化に寄与したと考える.また,今後も疑義照会件数を減らすよう,必要なDI情報の追加を行ない,医師・医事課職員へのアピールを行なうなど,ISOの基本姿勢での一つである「継続的改善」を行なうことで,良質で安全な医療を提供することに務めたい.
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