とうもろこしサイレージに分布する酵母および糸状菌について,分類学的検索を行なうとともに,微生物の消長に及ぼすカプロン酸および塩酸添加の影響と,変敗防止効果との関係を検討する実験を行ない,以下の結果を得た.1) 供試サイレージより153株の酵母を採取し,選定した33株について種名検索を行ない,供試株を,Pichia membranaefaciens(11株),P. fermentans(2株),Saccharomyces exiguus(6株),S. bailii var. osmophilus(2株),およびCandida krusei(12株)と同定した.2) 糸状菌は18株を採取し,選定した10株を,Monascussp.(4株),Geotrichum sp.(4株),および,Mucor sp.と同定した.3) 供試サイレージでは,対照区(1区),および調製時にカプロン酸と塩酸を併用添加した区(3区)で変敗が生起した.変敗の主因菌は,1区については,実験1ではC. kruseiおよびMonascus sp.,同じく実験2ではS. exiguus, C. kruseiおよびGeotrichum sp.と材料によって異なったが,3区では2回の実験ともP. membranaefaciensであった.4) 3区の変敗は,P. membranaefaciensが増殖したことによると考えられた.5) サイレージ調製時,またはサイロ開封時のカプロン酸の単独添加により,対照区において認められた主因菌の好気的環境下における増殖が抑制された.
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