環境や社会問題の解決に向けて行動を起こすためには、人と自然の心理的関係性や人と地域社会の心理的関係性が重要だと考えられてきたが、これらの心理的関係性がどのように関わりあうかは十分に検証されてこなかった。効果的な環境教育や持続可能な開発のための教育を検討すべく、自然再生が進む福井県三方五湖地域の中学生を対象に2つの分析を行った。第一の検討では現在と理想における、人と自然および人と地域社会の心理的関係性の間にある相関関係を調べた。全ての要素間に有意な相関が見られ、人と自然および人と地域社会の心理的関係性は相互関係で結ばれていることが明らかになった。また、対象地域では自然と地域社会が大きく重なって捉えられるほか、現在と理想における心理的関係性が影響し合うことがわかった。第二の検討では、属性および習慣的要因と第一の検討における各要素との関係を調べた。学年、卒業小学校、中学校時代に自然の中で過ごす時間、自然や環境に関する活動への参加頻度、自然や環境に関して話す頻度および地域の祭りや行事への参加頻度が有意な関係を示した。本研究結果からは自然と地域社会に関する学びを相互に関連づけ、理想の自然と地域社会との関係性を考える機会や自然の中で過ごす時間と自然や環境に関して話す機会を増やし、地域の祭りや行事への参加をとおして自然と地域社会との関係性を強化することが、環境教育などにおいて重要だと考えられた。
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