三原山の火山性微動には,火山性常時微動,前駆微動,
噴火
微動および末期微動の4種類がある.また,火山性地震には,
噴火
の前駆地震とA型地震の2つの型がある.
噴火
活動に際して,これらの微動や地震は規則的な発生順序を示し,およそ,次のように進行する.
火山性常時微動→ 前駆地震→←→ 前駆微動→
噴火
微動→ 末期微動→ 火山性常時微動
このように,微動と地震の型が分類でき,かつ,火山活動の規則性が見出されたのは,1965年以降,伊豆大島島内に展開したJMA-62A型電磁地震計の多点観測の成果である.
ところで,1964年以前の三原山の火山観測には,器械式地震計(主としてWiechert地震計)が使用されていたが,この器械は,性能および観測点の位置の関係で,
噴火
微動,前駆地震の一部およびA型地震しか記録できなかったことが判明した.
そこで,Wiechert地震計で観測を行なった全期間(1938年11月~1969年)について,
噴火
の前駆地震を再験測し,それと,
噴火
との時間的関係を調べた.
その結果,大抵の
噴火
活動の始まる3時間ないし3日前に,前駆地震が発生していたことがわかった.また,前駆地震と
噴火
開始との時間差は,火口内の閉塞の度合いに関係が深く,溶岩が火口を埋めている時期には時間差が概して長く,火口底が深く開いている時期には短くなる傾向を示した.
噴火
微動は,
噴火
の衝撃による震動であることがたしかめられた.その形は,
噴火
が連続するか,断続するか,単独で起こるかによって,連続型
噴火
微動,唸り型
噴火
微動,孤立型
噴火
微動などに変形する.
噴火
微動と前駆地震は,どちらも押円錐型の発生機構を持っていると考えられる.
噴火
のからくりは次のように考えられる.
噴火
活動は,火口縁から約500mの深さで発生する前駆地震によって火ぶたが切られ,その地震によって生じた火道内の割れ目に沿って溶岩や火山ガスが上昇を始める.この時,前駆微動が発生する.やがて,火口縁から約300mの深さで
噴火
が起こる.
弧立型
噴火
微動の最大振幅の頻度を,石本・飯田の方法で統計すると,統計図は多くの場合,上に凸に折れ曲った2つの直線で現わされる.石本・飯田の系数
mは,小さな振幅に対して
m=2~4,大きな振幅に対して
m=3~7となる.また,小さい
噴火
微動だけが発生した時期の統計では,統計図に折れ曲りができなくて,一つの直線で現わされる.この場合の
mは3~4である.
A型地震は火山性地震のうちの一つの種類で,伊豆大島の北西~ 西~ 南~南東の広い近海で発生する深さ0~20kmの地震を総称して名付けたものである.最大振幅の頻度について統計した石本・飯田の系数
mは約1.8を示す.群発することが多いが,群発活動期と三原山の
噴火
活動期との関係は薄い.
伊豆大島で観測される地震波の初動方向は特殊な方向へかたよる.これは,伊豆大島ないしその周辺の地下構造と大きな関係があり,伊豆大島の北北東では深く,南南西では浅くなって傾斜している地下構造が考えられ,また,伊豆大島および大島の東側では,内部に地震波速度を遅くする所があると考えられる.また,A地型震が発生する地域と,発生しない地域とを通過する地震波の初動のかたよる方向には,顕著な相違が認められる.
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