食品照射に関して協議を行ったり情報提供を行うことの必要性が1982年に確認され, 国連食糧農業機関 (FAO), 国際原子力機関 (IAEA), 世界保健機関 (WHO) の事務局長が率先して食品照射に関する諮問グループを設立した。この諮問グループの第一回の会合は1984年に開催された。
国際食品照射諮問グループ (ICGFI) は以下の3つの主な機能を有している。
(1) 食品照射の世界的な進展を評価する。
(2) FAO, IAEA, WHOの3国際機関及びこれらの国際機関の加盟国に対して助言を与える。
(3) これらの国際機関を通じて, 食品照射に関する合同専門家委員会及び
国際食品規格委員会
に対して情報提供を行う。
ICGFIは, 食品照射に係わる安全性の確保, 法律制定, 国民への情報提供, 技術的及び経済的な実用性, トレーニング, 国際貿易などの問題に対して意見を述べている。ICGFIの活動は, その加盟国の現金拠出かインカインド協力によって支援されている。ICGFIの作成するリストやレポート及びICGFIの開催するワークショップや会合は, 各国政府, 国連機関及びあらゆる種類の組織に対して, 食品照射の実用化, 技術開発, 表示, 規制, トレーニングの内容, 国民教育などに関する最新の情報を提供している。ICGFIは食品照射施設や許可品目のリストを作成している。
現在, 37ケ国において何らかの食品照射が許可されており, 許可されている食品は全部で40種類にも及ぶ。また, 約20ケ国は商業規模の照射施設を有している。将来, 食品照射事業者の登録リストが作成される予定である。
食品照射の分野における法律や規制の国際間の調和の支援をするために, ICGFIは各国の法律と規制のリストを作成している。さらに, 食品照射施設の認可や登録に対するモデル的な規制を現在作成中である。ICGFIは, 食品表示に関する規格委員会が照射食品の表示に対する規定を作成する際の支援も行っている。
ICGFIはまた, 食品管理, 検疫処理, 衛生面での品質, 経済性などの話題に関する種々のワークショップを開催している。ワークショップはすべての地域で開催されており, そのうちの1つは経済性の検討のためのハンドブックを出版した。
商業的食品照射施設の管理者やオペレーターをトレーニングしたり資格を与えるためのカリキュラムを実施することにより, 照射食品の安全性と品質を高める努力をしている。食品の検査官と規制当局者のためのトレーニングコースも開催している。
ICGFIは, 国際食品規格と同様の技術的な指針を, 生鮮果物, 生鮮野菜, 穀物, 海産物などの8つの食品のために作成した。
食品の衛生面での品質を保証するための放射線照射の利用は, ICGFIの作業部会によって検討され, その報告書は1987年にWHOによって出版された。
ICGFIの加盟国による一般国民への情報提供の手助けをするために, ICGFIは, 食品照射に関するサンプルパンフレットを準備している。さらに, ICGFIは照射食品の安全性と健全性に関する印刷物や食品照射に関する短いビデオを作成している。1988年4月にフランスにおいて開催された作業部会は, 食品照射に関して国民に提供すべき情報を選び出した。
照射食品の国際貿易に係わる問題を検討するために, マーケッティングと広報活動, 植物防疫処理としての照射, 照射食品の貿易の促進について論じるためのいくつかの作業部会が開催された。
ICGFIは, 食品照射に関するあらゆる情報の整理と普及に対する唯一の有効な組織である。過去4年間にわたって提供された情報量は非常に多い。加盟国はさらに5年間のICGFIの延長に同意した。
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