手掌および手指腹を直接圧抵するhand-press培養法(以下HP法と略す)を用いて手白癬について検討した。対象は1996~98年に済生会川口総合病院皮膚科を受診した直接鏡検が陽性の未治療の手白癬患者17例で,内訳は男14例,女3例,年齢は31~81歳,平均57.1歳であった。17例中16例に他の部位の白癬の合併を認めた。通常の試験管培養とともにHP法を行った。すなわち243×243×18 mmの滅菌シャーレに5-fluorocytosineなどを添加したサブロー·ブドウ糖寒天培地を作製し,この培地上に被験者の手掌と指腹を十分に圧抵した後培養した。結果は試験管培養は17例中16例(94.1%)が陽性で,
Trichophyton rubrum 13例,
T. mentagrophytes 3例であった。HP法は17例中6例(35.3%)(
T. rubrum5例,
T. mentagrophytes 1例)が陽性で,集落数は9,3,2コロニー各1例,1コロニー3例で,合計17コロニー,平均1.0コロニーであった。17例中両法ともに陽性が6例,試験管培養のみ陽性が10例,両法ともに陰性が1例であった。筆者らの検討によると足白癬患者のfoot-press培養法は113例中76例(67.3%)が陽性で,集落数は100コロニー以上の例もあった。これに比較すると,手白癬は菌の散布率,散布集落数ともに少なく,足白癬に比較して感染源になりにくいと結論した。また手白癬患者からの本人および他人の皮膚への直接感染も,手白癬の頻度が低いことも合わせて,実際には少ないと推測した。
抄録全体を表示