瀬戸内海に存在する多数の砂堆 (sandridge) を構成する砕屑粒子は, 従来, 潮流によって海底の堆積物や岩盤が浸食されたものと考えられてきた. しかし, こうした砕屑物の中には, 生物骨格に起源を持つ生砕物も多量に含まれている. 愛媛県松山市の沖に位置する砂堆群およびその周辺海域において, 表層堆積物を採取し, それに含まれる粒径2mm以上の生砕物の分布様式, 種構成そして保存状態を詳しく解析した. その結果, 調査地域では, この生砕物は砂堆上の堆積物中で高い割合を示す事がわかった. また, 調査海域においてもっとも規模の大きい
大州
砂堆上に分布するアカフジッボの殻片は, 調査海域西方の海釜から掃き寄せられたこと, 全域で構成割合の高い二枚貝ビロードマクラの殻片は,
大州
砂堆の東あるいは南西方の砂泥底を供給源として分散し, 砂堆に掃き寄せられていった可能性が高いことがわかった. つまり, 砂堆上でこうした生砕物の割合が高くなるのは, 砂堆上で多くの生物が生活し, 生砕物を供給してきたのではなく, 砂堆をとりまく複数の供給源から, 波や流れによって掃き寄せられたためと考えられる.
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