1) 直線上を操者の誘尋に従つて歩行する5頭の馬, 3頭の牛の体型変化を, 送り1/25秒の連続写真及びサイクログラムを以て追跡した。体の主な部分に標した標点の軌跡を解析し, 上下運動に表れる諸特徴を手がかりに歩行時の各部の連動的な変化の状態を調べた。
2) 躯幹軸心は両端差掛梁に週期的な力を加えた場合の梁上の諸点の様に, 胸郭の骨組に対して, 頭と尾が逆に上下し, 従つて胸郭の前後に2ヶ所の不動な部位が現れる。
3) 肘, 股脛関節が最も安定, 即ち地面と平行に移動し, 躯幹の諸部位の移動は等速的で, 略々類似する軌跡を示し, 下位の各部の如く, 離, 着地, 負重等による速度変化は不明瞭である。負重, 蹴返し等による不規則な軌跡の動揺は下位の各部に著しく, 上位の各部では不明瞭になるか, 又は滑かな上下動によつて消去される。
4) 躯幹軸心の上下運動は1
完歩
2波動で頭尾部に偏る程高く, 肢の諸点は躯幹, 自由部共に1波動, 自由部は夫々の部位の特徴を表す。
5) 牛, 馬の差は頭頸部の相対運動, 腰尾部の波動の形, 自由部に現れる蹴返しによる波動の大小及び曲率, 下趾の反回及び推進時の軌跡の経過等に明かであるが, 一般に牛が重心の移動を頭頸の低い位置づけによつて行い, 四肢の運動が短節, 硬直であるのに対し, 馬は頭頸の上下動と後躯の推進とを協調的に行い, 肢端の弾力的な運動がこれに対応し, 離着地の弾発が動作に重要な役割を果すと推測される。
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