新しいセフェム系抗生物質Cefodizime (CDZM) について産婦人科領域で, 組織移行性, 骨盤死腔滲出液移行性, 臨床成績を検討し, 以下の結果を得た。
本剤1g, 点滴静注 (30分) 後の骨盤内性器組織内濃度を測定し, 組織移行が良好であることを認めた。最高濃度は子宮動脈血清56.25μg/ml, 各組織23.56~40.64μg/gで, 主要病原菌に対するMIC
80を越えていた。
骨盤死腔滲出液中にも良好な移行を示し, 最高6.25~6.52μg/mlが認められた。
産婦人科的感染症17例に対し, 主として本剤1回1g, 1日2回投与で15例 (88.2%) に臨床効果, 83.3%に細菌学的効果を認め, 副作用はなかった。
Cefodizime (CDZM) ばヘキスト社 (西独) とルセル社 (仏) で合成, 開発された新しい注射用セフェム系抗生物質である。
本剤はセファロスポリン骨格の7位にCefotaximeと同様のsyn-Methoxyiminoaminothiazolyl基を有し, 3位にMercaptothiazolyl基を配した構造を有する。
本剤は広域の抗菌スペクトルを有し, β-Lactamaseに対しては一部のCephalosporinase型を除き,ほとんどのβ-Lactamaseに安定で, いわゆる第3世代セフェム系抗生物質と同等の抗菌力を示す1)。
本剤は静脈内投与により投与量に比例した高血中濃度が得られ, 組織移行性も良い1)。
本研究においては, 本剤の産婦人科領域における有用性を評価するため, 骨盤内性器組織や骨盤死腔滲出液への移行と, それらの薬動力学的解析を行い, 一方, 産婦人科的感染症に対する効果と副作用を検討した。
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