微細脳障害症候群を呈する小児において, 行為, 言語, 認知などの諸機能の障害が認められる. 行為障害を中心にみると, 行為の発達は, 認知の発達, および, 運動機能の発達などと関連している. 著者らは, 微細脳障害症候群と診断された小児を対象として失行, 失認を発達段階における障害として把握することを試みた. Piagetの発達理論による発達段階 (i. 感覚運動的段階, ii. 前操作的段階, iii. 操作的段階) と, Ajuriaguerra, HecaenらによるPiagetの行為の発達段階をもとにした失行分類 (i. 感覚運動失行, ii. 身体一空間失行, iii. 象徴形成の失行) を対応させて, 行為障害を分析し検討した.
対象は, 多動性行動異常, 学習障害, 微小運動障害などを有し, 知能指数はWISC知能検査で全IQ80以上のものを微細脳障害症候群と診断した. 年齢は7-12歳の男児26人, 女児4人の計30人である. 標準化された発達検査から, 幾何図形の描画, 左右識別, 片足立ち, スキップ, 繩とび, 鋏つかい, 衣服の着脱, ひもむすびなど15項目をえらび, 到達年齢に達していても不可能な場合を不合格とした.
構成行為, 運動行為, 着衣行為など15項目の不合格率は48.5%であった. これらの障害は, 年齢は操作的段階に達しているにも拘らず, 実際には, 前操作的段階にあるもので, 順序性, 視空間と身体図式との関係, 身体の座標系の障害が, いわゆる, 発達性失行失認症候群の出現に関係あるものと考えた.
抄録全体を表示