今回は, 大豆および大豆もやしを用いて, 無機成分含有量を測定し, その分布型を決定し, それらの成分の特性値を求め, あわせて大豆の場合は品種別, もやしの場合は部位別における含有量の動向を検討した.もやしの無機成分含有量は, 栽培水の影響を受けることから, 栽培水に無機成分を添加し, 他の無機元素の吸収に及ぼす影響について検討した.(1)各種無機成分含有量について, その分布型を調べた結果, 大豆の分布型は, カルシウム, リン, 鉄, ナトリウム, 亜鉛, マンガンおよびニッケルは正規分布し, ヵリゥム, マグネシウムおよび銅は対数正規分布を示した.大豆もやしの分布型は, カルシウム, リン, ナトリウム, カリウム, マグネシウム, 亜鉛, 銅およびマンガンは正規分布し, 鉄は対数正規分布を示した.(2)大豆を品種により比較すると, 無機成分含有量に差が見られた.カルシウム, リン, マグネシウムおよびマンガンはタマホマレが最も多く, カルシウムおよびマンガンは最低値を示したムラユタカの約1.4倍, リンはツルノコの1.2倍, マグネシウムはフクユタカの1.2倍を示した.鉄, ナトリウム, カリウム, 亜鉛および銅はエンレイに最も多く, 鉄, ナトリウムおよび銅は最低値を示したツルノコの約1.4から1.5倍, 亜鉛はムラユタカの1.2倍を示した.全体的に見て無機成分含有量はタマホマレとエンレイに多く含まれていた.(3)各種元素間の相関関係を調べた結果, リンーカリウム間に大豆もやしに正に相関関係が見られた.相助作用があると言われているリンーマグネシウム間に, 大豆全体とツルノコ, ムラユタカおよび大豆もやしに正の相関関係が見られた.イオンの拮抗作用があると言われているカリウムイオンとナトリウムイオンとカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの相関関係については, ナトリウムーカルシウム間, カリウムーカルシウム間およびカリウムーマグネシウム間に大豆もやしにおいて負の相関関係が見られ拮抗作用のあることがうかがわれた.大豆の場合は, 品種により負の相関関係が見られたが, 有意差が見られるほど顕著ではなかった.ナトリウムーカリウム間はタマホマレに正の相関関係が見られた.大豆もやしに負の相関関係が見られた.(4)大豆もやしの部位による比較の結果, カルシウム, リン, 鉄, ナトリウム, カリウム, マグネシウム, 亜鉛および銅は, 子葉, 根, 胚軸の順に多く含まれ, マンガンのみ, 子葉, 胚軸, 根の順で多く含まれた.子葉は, どの元素も多く含まれ, 少ないナトリウムでも胚軸の2倍, 多いものでは, マンガンの34倍, その他の元素も5〜9倍含まれた.マンガンは葉緑素の生成に関与すると言われているが, もやしの場合その必要がなく, 子葉からマンガンの消長がきわめて少ないと思われる.(5)もやし全体を100とした場合, 各部位における重量比は, 子葉38.5,胚軸54.6,根6.9と成った.(6)無機元素を添加した大豆もやしについて検討した.栽培水の濃度は, 養液栽培の液肥濃度を参考にブラックマッペもやし同様, カルシウム, カリウムおよびマグネシウムの単独と, カルシウムとカリウム混合, カルシウムとマグネシウムの混合のそれぞれを低濃度, 高濃度の2種類調整した.カリウムを添加して栽培した場合, 無添加栽培にくらべ, ナトリウム, マグネシウムが減少した.マグネシウム添加によりリンの含有量の増加が認められた.(7)カルシウム, カリウムおよびマグネシウムの含有量の増加率はその栽培水濃度に比例しなかった.鉄, 亜鉛, 銅およびマンガンの含有量については, 添加元素の影響はあまり見られなかった.(8)栽培7日目の無添加栽培もやしの収量を100とした時の重量比は, Ca5mg%溶液で栽培したもやしは91,Calmg%は87,K10mg%は82,K30mg%は77,Mg5mg%は71,Mg10mg%は69,Ca5mg%+K10mg%混合溶液は88,Ca15mg%+K30mg%は75,Ca5mg%+Mg10mg%は64となり, 大豆もやしでは, 栽培水の濃度が高いほど収量は低い結果となった.肥料濃度が高すぎると植物を傷め, 成長を阻害すると言われている.このことから大豆もやしに関しては, 栽培水濃度が高かったと推察されるが引き続き実験を行い今後の検討が必要となる.
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