神奈川県内の一河川 (
引地川
) でみられた
Vibrlo cholerae O140について, 該菌株の性状を詳細に解析するために, 本菌分離株の生化学的性状試験, 毒素遺伝子の検索およびrandom amplified polymorphicDNA (RAPD) 解析を実施した.
1994年10月および1996年5月, 6月, 7月に
引地川
河川水から分離された
V. cholerae O140各々1株, 計4株の生化学的性状は, 常法による性状およびアピ50CHによる糖分解性ともに同一であった.また, 核菌株はいずれもコレラ菌稲葉因子 (C) 特異試薬および
V. cholerae O140特異因子 (F) 血清に凝集を示した.
本分離株4株と
V. cholerae O140の血清型レファレンス株 (487-95) 1株, 我が国各地での河川水または海水からの分離株25株, フィリピン, インド, ベトナム, 中国での食品または下痢患者便からの分離株4株, 計34株について,
ctx, zot, hlyAおよびNAG-ST遺伝子の各々をPCR法によって検索した.その結果, いずれも
ctx, zot, NAG-ST遺伝子は陰性であったが,
hlyAを保有していた.
本菌はコレラ菌と共通抗原を持つものの, その病原性は一般の
V. cholerae non-O1 non-O139と同様と思われる.
一方, これらの菌株についてRAPD解析を行った結果, RAPDパターンは9パターンに分かれ, 本法の疫学的解析法としての有用性が認められた.
引地川
由来
V. cholerae O140分離株4株のRAPDパターンは, いずれも同一であった.以上のことから, 該河川の
V. cholerae O140の汚染は特定の株による経常的なものと推測された.
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