3年保育幼稚園児にロールシャッハ・テストによるイメージ発達の縦断研究を行うため, 第1年次に実施したテスト結果から知られたことは次のようである.
1) ロ・テストの反応数, 反応領域, 決定因等についての形式分析面よりみたイメージ生成の特質は, その少産性, 固執性, 未分化的全体性とあいまい性, 運動のイメージに伴う行動性, 色彩によって誘発される情動の衝動性等の点で多少の数値の差はあるものの, ほぼ諸家の研究結果と一致した.これは発達の普遍性を表すものと思われる.
2) ロ・テストの反応内容を各カードの領域と対応させて検討した内容分析面では, 対象児のイメージ内容に現代の情報社会化, 科学技術化の波と, 自然後退の影響が強く表れていることが知られた.すなわちマスコミの産物であり, テレビ・マンガに氾濫する
怪獣
や, 身近な乗物化した飛行機の多出, 一方, 動物反応のなかから四足獣がひどく減少し, 身辺的な虫, 鳥, 蝶が増え, その他の自然, 植物反応も減少する等, 1950年代のAmesらによる結果と比較すると著しい差が認められた.
3) 以上は1980年代における3, 4歳児のイメージ傾向の特質として, 今後3年間の幼児教育による発達的変化が注目される.
抄録全体を表示