縦隔内甲状腺腫の1例を経験したので報告する.患者は46歳,男性で,前頸部腫瘤を主訴として来院,各種画像診断により,甲状腺右葉より発生し,気管支を左方へ圧排する不完全縦隔甲状腺腫と診断された.しかし,超音波, CT, MRIなどの所見からは,その質的診断に難渋した.術中所見では,腫瘤は甲状腺右葉から発生し,縦隔内へ深く懸垂したもので,陳旧性出血液を思わせる内溶液を含む嚢胞性濾胞腺腫であった.手術術式の決定には,血管造影が非常に有用であり,頸部襟状切開のみにて安全に腫瘤摘出術を行いえた.術後4年を経過した現在,嗄声もなく,経過良好である.
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