目的
本研究では、全身麻酔下で開腹術を受ける患者への、保温着が従来の方法に比べ保温効果が有効であるかを検討することを目的とする。
対象および方法
1.対象
対象は、開腹術を受ける外科および産婦人科患者群(n=36)とした。患者群は、保温着を着用しない患者群(非保温着群;n=19)と、保温着を着用する患者群(保温着群;n=17)に分けた。倫理的配慮として、患者に対して事前に本研究の目的および方法を説明し、同意を得てから本研究を実施した。
2.方法
1)保温方法
手術台の上に38℃の温水を入れた加温マット(アイカ;簡易低体温加温装置)を敷き、その上にヘ゛ット゛シーツを敷いた。加温マットとヘ゛ット゛シーツの間にハ゛スタオルを2枚敷いた。術後に着用する患者の手術着等は、手術台からストレッチャーへ移動した時にすぐ着用できるように準備をしておき、その上に電気毛布をかけ、手術台からストレッチャーに移動する直前まで温めた。輸液加温器(アニメック)を麻酔導入後より使用した。
手術室
内室温は、術前後を26-28℃、術中を23-24℃とした。
2)保温着
保温着は、[1]ホ゜リエステル100%(フリース素材)、[2]両上肢・両下肢を覆うもの、[3]生地の色は、温かみの感じられる黄色とした。
3)体温測定
体温は、皮膚温(日本光電 YSI-409 JGサミスタ温度フ゜ローフ゛ 体表用)と鼓膜温(仁丹耳式体温計S-15)を手術開始から手術終了まで測定した。皮膚温測定は、胸部,上腕,前腕,手背の4か所をそれぞれ15分毎に測定した。
4) 自覚症状調査
対象患者に、術後3_から_4日に
手術室
内の温覚に関する自覚症状(寒さの程度)を問診して調査した。
結果および考察
1.皮膚温・鼓膜温
手術開始と開始後180分の皮膚温(℃)は、33.2,32.5、保温着群33.5,33.5であった。鼓膜温(℃)では、非保温着群36.6,36.2、保温着群36.4,36.1であった。非保温着群は手術開始後皮膚温で低下し、保温着群は皮膚温と鼓膜温ともに低下しなかった。非保温着群は体温下降しているが、保温着群は体温変化していないことが分かった。
2.自覚症状
自覚症状では、ほとんどの患者が
手術室
内の温感に関することを覚えていないという解答であった。しかし、術後にシハ゛リンク゛が観察された患者は0例であった。手術終了直後に「寒かった。」という言動が聞かれた症例は非保温着群(19症例)のうち4例であった。
3.考察
保温着は、従来の保温方法に比べ、保温着を着用することにより皮膚温への保温効果が得られることにより、患者の自覚症状を改善させる効果を示したと考えられた。今後も、患者が寒さを訴えることなく手術が受けられるように、
手術室
看護を行っていきたいと考えている。
まとめ
今回の研究で、保温性のあるフリース素材で作成した保温着は、開腹患者の手術中の体温低下を予防し、また、患者の自覚症状の改善にも有効であると考える。
参考文献
1)赤田隆、(1999)術中体温管理に用いられる加温/保温法と冷却法、p43-50,オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
2)伊藤真起他、(1990)術中体温の変動とその対策、p215-217、第21回日本看護学会集録
3)設楽敏郎、(1999)体温調節機構の基礎、p22-26、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
4)鎌田康宏,山陰道明,並木昭義他、(1999)全身麻酔と体温、p33-37、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
5)根岸千晴、(1999)体温管理と患者予 後、p51-56、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
6)一條敏江、(1990)全身麻酔下における術中体温低下防止-保温用具の工夫について-、p211-214、第21回日本看護学会集録
7)西村美香他、(1993)手術中における体温保持のリネンの考案・作成、p153-155、第24回日本看護学会集録
抄録全体を表示