JCO臨界事故後の調査,住民ケアの経験,文献研究により,今後の被曝後のケアに役立つ知見をまとめた.被曝事故後の反応としては,自然災害時と同様の反応と異なる反応が起こる場合がある.さらに,大規模人為災害の特徴に加えて,見えない災害(invisible)の特徴を兼ね備え,そのうえに放射線事故の特徴が加わる.見えない災害では,不安は,空間的・時間的・心理的に広がる特徴が顕著であり,情報への不信感がその不安をいっそう上昇させる.放射線事故後の特徴は,広範囲,長期性,ホルモンや遺伝子への影響不安,胎児や子どもが放射能に弱い,技術者の見解不一致,放射線測定の困難,風評被害,情報の錯綜,対処行動へのフィードバック認知の暴走が挙げられた.放射線災害後のケアは,情報発信者,住民の集団的ケア,個人的ケアに分けられた.働き盛りの男性もリーダーと共通するリスクファクターであると考えられ,被災者の高齢化がハイリスクとして問題視された.
抄録全体を表示