輸血療法の適正化を推進する目的で, 昭和大学病院における1998年の輸血部業務の現状を報告する.各種の同種血輸血, すなわち日赤血の使用はほぼ適正に行われていたが, そのなかで, 不適切な取り扱いにより廃棄とされた製剤が0.98%あったこと, 必然性のない院内採血の実施, 2.6%の放射線未照射血の輸血が重大な問題点として挙げられる.診療科別の日赤血の使用状況では, 赤血球M・A・P (人赤血球濃厚液, 保存液の主成分はMannitol, Adenine, Phosphateである: MAP) は, 内科系, 外科系で大きな差は無く, 新鮮凍結血漿 (Fresh Frozen Plasma: FFP) は外科系で, 濃厚血小板 (Pletelet Concentrate: PC) は内科系で多く使用された.今後の課題は, MAPの準備量を更に適正化し返却率を下げること, およびFFPとPCについては, 使用指針を遵守し使用量を減少させることである.自己血輸血は多くの科で施行され, 同種血輸血の削減に有効であった.自己血のみで手術が施行された症例は年間の輸血を伴う手術症例の23%であった.対象症例の適切な選択による自己血輸血の実施の拡大がさらに望まれる.輸血副作用は, 輸血症例全体の0.5%で発生したが, すべて軽症であった.血液製剤の種類や患者要因など, 副作用の原因は特定されなかった.現在, 輸血副作用としての感染症の早期発見と二次感染予防の目的で, 輸血施行後2~6カ月後に, 梅毒・HBV・HCV・HIV・HTLV-Iの検査を実施している.患者本人と主治医に検査の実施を促す通知を行っているが, 実施率は37%であった.これまでの追跡調査では, 陽性化例は認められていないが, 本調査の徹底が重要である.より効果的な輸血のためにこのデータが使用されることを期待する.
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