定温管状温度こう配炉中でナフタリン,フェナントレン,アントラセン,クリセンなどを
昇華させ昇華
に及ぼす温度,排気圧の影響を調べ,これら物質の分離定量分析の可能性につき検討した.
その結果,排気圧が低いほど
昇華帯の幅がせばまり低い温度に昇華
しよく分離されたが,1mmHg以下の排気圧ではナフタリンの凝結はみられなかった.排気圧1mmHgではナフタリンは30~40℃,フェナントレンでは45~80℃,アントラセンでは50~90℃,クリセンでは144~158℃に
昇華
帯が形成され,フェナントレンとアントラセンの混合物からの相互分離は困難であったが,他はだいたい定量的に分離され,これら混合試料中からの定量分析も可能であった.特にフェナントレン,アントラセン,クリセン中からのナフタリンはほとんど誤差なく定量できた.
また試料を
昇華
精製する場合,管状温度こう配炉中での精製では試料添加量は内径10mmのガラス管に対し10mg~30mgがよく,これ以下あるいはこれ以上の場合はいずれも誤差を与えた.
また通常の減圧精製法に比べ,管状温度こう配炉中での
昇華
は1回の
昇華
できわめて純粋な物質が得られることがわかった.
ニクロム線を巻いた磁製管内部に冷却用らせん管を通し,ニクロム線で加熱しながららせん管の下部より上方に向け一定流速で空気を流すことによって定温管状温度こう配炉が得られた.この炉中でナフタリン,フェナントレン,アントラセン,クリセンなどの芳香族炭化水素を
昇華
し分離することができた.特にフェナントレン,アントラセン,クリセン中のナフタリンはほとんど誤差なく定量分析できることがわかった.またこの方法を試薬精製に利用する場合,通常の減圧精製法に比べ1回の
昇華
で非常に純粋な物質が得られることが吸収スペクトルの測定から判明した.またさらに試料添加部分の温度をできるだけ低くすると同時に,
昇華
管中の温度こう配をゆるやかにし,ゆっくり
昇華
熟成させることにより,大きな結晶が得られた.またゆるやかな温度こう配で何度も
昇華
をくりかえすことにより,通常の方法では分離困難な類縁物質の分離ができるのではないかと思われる.
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