日本の在来馬の起源については, 様々な議論がなされてきた. 特に, 縄文時代におけるウマの存否に関しては, 実際に縄文遺跡からウマ遺存体が出土している例が少なくないことを根拠とする存在説に対して, 近年の精密な調査において, 確実に縄文時代に遡る出土例がみられないことから, 存在説に疑問が投じられ, 他にも文化的見地や遺伝学的調査から不在説が支持されている. 著者らは, この問題を解決する一助として, 縄文遺跡から出土したウマ骨資料について, 理化学分析により年代の検証を試みている. 本報告は, 千葉市木戸作遺跡出土ウマ遺存体に関して, 下田 (1979) による化学分析の結果を基に, 今回新たに分析したデータを加えて, フッ素年代判定法により年代の再評価を行ったものである. その結果, このウマ遺存体は縄文時代のものではなく, 縄文後期の貝層へ後世に混入したものであると判定された. 他の遺跡から出土したウマ遺存体に関する年代学的研究においても同様の結果が示されており,「縄文馬」の存在については, 再検討する必要がある.
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