要旨:腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術後の被覆瘤壁が拡大し,術後10 年目に破裂した症例を経験した.症例は77 歳,男性.2005 年8 月に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を施行.術後1 年目より被覆瘤壁の拡大傾向を認めた.CT 検査で高吸収域を呈する血腫が示唆されたが,CT,MRI および腹部超音波検査では明らかな出血源を同定できず,外来で経過観察していた.被覆瘤壁は約4 mm/ 年の拡大を認め,10 年後に破裂を来した.破裂時に血圧低下や腹部症状はなく,他疾患精査のCT 検査で発見された.手術所見は左後腹膜腔に血腫を認め,被覆瘤壁内は新鮮血栓が充満していた.吻合部瘤や人工血管破損はなく,下腸間膜動脈や腰動脈からの逆流も認めなかった.瘤壁全体からびまん性にoozing を認めるのみであった.同部を止血し,瘤縫縮をして手術を終了.被覆瘤壁自体からの出血により拡大し,破裂に至った極めて稀な症例を経験したので報告する.
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