フェノールフタレインのような有機化合物の中には,構造上,複数の
構造異性体
で存在可能なものが多い.一方,可視・紫外吸収スペクトルは,多くの高次の情報を含んでおり,溶存構造に関する情報もその一つである.本報告では,フェノールフタレインを例に用いて,分子軌道計算を介して,スペクトルからその溶存構造を推定することを試みた.個々の化学種の成分スペクトルは,複数の化学種の寄与が重なったスペクトルから化学因子分析法を用いて抽出した.これらの情報分離の方法を組み合わせることにより,特定の溶液内に存在する
構造異性体
を特定化することができた.推定された
構造異性体
から,逐次酸解離定数の特異な変化や反応経路が説明できた.
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