中国では、2008年から「集団林権制度改革」と呼ばれる政策が全域的に実施されつつある。その主旨は、国家・集団(村等)に土地所有が限定される中、集団所有の林地使用権、及び林木所有権を、法的に保障された独立の
権利
関係として集団内の個別の農民世帯に一旦分配し、その上で、それらの
権利
関係の移転・流動化を進めるというものである。近年の中国では、土地・木材需要増に伴い林地・林木の経済的価値が上昇し、地方政府や企業資本による林地への便益追求の動きが強まる中で、林地をめぐる
権利
紛争が多発し、立場の弱い農民が不当に便益追求のプロセスから排除される可能性が懸念されてきた。こうした背景から、集団林権制度改革では、集団内の個別世帯への
権利
分配の徹底・優先が掲げられ、
権利
関係の近代的財産権としての体系化、林地の境界確定、
権利
証書(林権証)発行に基づく登記管理等が大々的に推し進められた。その反面、この改革は、法の保護を受けた資産としての
権利
関係の流動化を掲げることによって、経営力のある企業資本や個人等による林地の集約経営を促してもいた。すなわち、この改革は、林地経営における農民等の私的主体への
権利
委譲(分権化)と、その上での再集約(大規模化)を志向するものであった。これは、1990年代以降の政策方針に基本的に合致している。同時に、
権利
関係の分散化・流動化に伴う、適切な森林管理・保護の制度的枠組みの構築を迫られることになった。
抄録全体を表示