1965年および1966年の両年, 栃木県足利市郊外のクヌギ林内における樹洞5個について, 蚊発生に関する周年調査を行なつた.その成績は次のように要約される.1) 1965年には5個の樹洞から3属3種1, 029個体, また1966年には4個の樹洞から3属3種945個体の蚊幼虫・蛹が採集されたが, 蚊の種類と個体数の割合は両年ともにほぼ同様であつた(表2, 3).すなわち, Uranotaenia bimaculataフタクロホシチビカが圧倒的多数で全体の81.6% (1965年)および89.7% (1966年)を占め, 他は少数のAedes albopictusヒトスジシマカ(9.3%および5.4%)とTripteroides bambusaキンパラナガハシカ(9.0%および4.9%)であつた.2) 両年における蚊発生の消長の様相は類似していたが, これを総合すると次のようである.Ae. albopictusおよびTr. bambusaの幼虫は4月中旬に初めて出現し, 前者は10月中旬まで, 後者は9月下旬まで採集された.Ur. bimaculata幼虫は7月上旬初めて出現し, 前記両種の衰退する8月上旬から急に増加し, 9月下旬〜10月中旬に最盛に達し, 12月上旬まで採集された.12月中旬以降すべての蚊幼虫は消滅した.3) 当クヌギ林の樹洞では蚊の越冬幼虫は見出されなかつた.これは樹洞が地上に露出していたので, 厳冬季には樹洞内の水が枯渇または結氷したためである.
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