本論は, 公共物におけるデザインのありように関する研究のために, 現行法ならびに生活者からみた公共物の位置づけとそのデザイン留意点の抽出を目的としている。これらの公共性について社会的・歴史的観点から検証し, 公と私の関連性を明らかにし, 公共物の特質とそのデザインの考え方についてまとめたものである。その結果, 公共物は, それが私有財であっても景観形成の構成要素として周辺景観に影響を与えるものすべてのものであると定義することができた。また, 公共物のデザインにおける特質としては, 「サービス・機能・空間」「非競合性・非排除性」「生活との密着度」「外部不経済」を, そしてそのデザイン留意点としては「基本設計思想」「公と私の差」「個別性と普遍性」「借景の思想」をそれぞれ得た, 以上のように本研究では公共物のデザインのありようについての, 最も基礎的データベースを構築することができた。
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