1.はじめに
二つ玉低
気圧
とは,低
気圧
が日本列島の南北に対になって現れるものを言い,日本においては重要な
気圧
配置型のひとつである.飯田(2005)は,二つ玉低
気圧が形成されるときの気圧
配置として4つのパターンを紹介している.しかしながら,二つ玉低
気圧
に関する研究は少なく,二つ玉低
気圧
の出現頻度や,どういったパターンが多いのかといった調査は行われていない.
2.目的
二つ玉低
気圧
の気候学的調査を行うことを目的とする.過去20年間(1989年~2008年)の二つ玉低
気圧
の出現頻度を調べ,飯田(2005)で紹介されているパターンを参考に4つの分類型を設けて事例を分類し,それぞれの型の特徴を調査する.
3.使用データ・解析手法
はじめに,二つ玉低
気圧
の定義(地上天気図において,日本列島を挟んで低
気圧
が2つ解析されていること)を設け,二つ玉低
気圧
事例を抽出する.その中でも,予報官のイメージに近いと思われる顕著な二つ玉低
気圧
事例を選別し,それらを以下の4つに分類する.(_I_)並進タイプ:2つの低
気圧
が西方で発生し,日本列島を挟みながら東進する.(_II_)南岸低
気圧
メインタイプ:南岸低
気圧
が東進してきたときに,日本海上でもうひとつ低
気圧
が発生する.(_III_)日本海低
気圧
メインタイプ:日本海低
気圧
が東進してきたときに,太平洋側でもうひとつ低
気圧
が発生する.(_IV_)分裂したように見えるタイプ:ひとつの低
気圧
が九州付近で2つに分裂したように見える.これら4つの分類型は,それぞれ飯田(2005)の4つのパターンに対応する.
事例の分類後,各分類型毎に季節別出現頻度や低
気圧
の発生位置等を調査する.また,二つ玉低
気圧
の形成に対する日本列島の地形の影響を調べるため,各分類型からいくつか事例を選び,数値実験(日本列島除去実験)を行う.
4.結果と考察
並進タイプは春に多く出現する.ジェットの季節進行と関連している可能性がある.南岸低
気圧
メインタイプは冬にやや多く出現する.このタイプの場合,日本海上に発生する低
気圧
は,前線を伴わない弱い低
気圧
の場合が多い.南岸低
気圧
メインタイプは,季節性に特徴は見られないものの,太平洋側で発生する低
気圧
は,関東沖と九州・四国沖で多く発生する(図1).
数値実験の結果,並進タイプは実験の対象とした10事例全てで二つ玉低
気圧
の形成が確認できたが,南岸低
気圧メインタイプと日本海低気圧メインタイプでは二つ玉低気圧
が形成されない場合が2,3事例あった(図2).これらは,二つ玉低
気圧
の形成に対して地形の影響があることを示唆するものである.
数値実験を行った日本海低
気圧
メインタイプの1事例については,さらに詳細に解析を行った.その結果,四国沖で発生した小低
気圧
が,後に,潜熱解放で発達しながら,日本海低
気圧の上空にあったトラフと結合して総観規模の低気圧
にさらに発達していく様子が見られた.
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