10年前の交通外傷が原因と考えられた左肝管狭窄の1例を経験したので報告する.
症例は50歳,男性.症状は右季肋部痛と発熱. US, CT, PTCにて左肝内胆管の著明な拡張を認めた.10年前の交通事故による外傷性胆管狭窄を疑ったが,胆汁細胞診で異型細胞が認められたため悪性腫瘍も完全には否定できず肝左葉切除を行った.切除標本からは悪性所見は認められず,外傷性胆管狭窄と診断された.外傷性胆管狭窄は検索した範囲では本邦23例の報告があるが,その発症時期は受傷後2~4週間以内がほとんどであり,本症例が最長例と思われた.
腹部外傷を既往にもつ胆管狭窄症例は,受傷時期に関係なく,まず外傷性胆管狭窄を疑うべきと考えられた.
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