企業は社会的な枠組みの中でのみ存続可能な組織体であり,社会から何を求められているかを把握することは,企業自体に課せられた使命といえる。
近年,CSRへの取り組みの意義を企業価値の創造に直結するコーポレートガバナンスの一環として捉える動きが顕著になってきている。これは社会の中で企業が果たす責任が広く認知され,その貢献度および理念が人々の当該企業の企業価値を評価する尺度として機能するからである。各企業にとってはCSRを単に自社に課せられた義務としてではなく戦略的な位置づけを持たせて考える必要が生じる。
ただし,この尺度は,変化し続ける社会の価値観の中で責任の内容も変化することが前提となる。すなわち自らの活動について将来あるべき社会発展の展望に基づき,企業は自社の将来ビジョンを構築していく必要に迫られることになる。
さらに今後のCSRを考える際には,国内の社会変化を的確に読み取ることと同時に,世界標準を視野に入れた国際的な取り組みであることも必要となる。
このような観点からCSRにおける個別の評価項目についての検討がなされるべきであり,さらには企業の社会的責任を考える上でステークホルダーとの関係についての視点も不可欠なものとなる。
以上の要素を踏まえて企業CSRのあるべき姿を考えていくためには,現在進行形で行われているCSRを正確に読み取ることから始めることが有益である。すなわちその取り組み実態の正確な把握とCSRが果たし得る現実の機能を検討することが必要となる。
これらの実態把握こそが今後のCSR取り組みの方向性を決定すると言ってよいと思う。
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