1.南西諸島にある沖縄島,石垣島,西表島,竹富島,黒島,小浜島の6島の踏査を行った結果,サキシマスオウノキの分布が確認できた島は,沖縄島,石垣島,西表島,竹富島であり,竹富島は植栽木のみが確認できた.この他,奄美大島,請島,宮古島,伊良部島,波照間島での分布が文献によって確認できた.
2.南西諸島の各島におけるサキシマスオウノキの分布地は,踏査により確認した58ヶ所,既存資料だけで確認した11ヶ所の計69ヶ所であった.踏査により確認した分布地のうち既存資料にも記載され再度踏査によって確認された分布地は20ヶ所,新たに確認した分布地は38ヶ所,1926年から2001年までに消失した分布地は3ヶ所であった.
3.踏査で確認したサキシマスオウノキの自生地は,河川下流域の氾濫原に29ヶ所,海岸に7ヶ所,崩壊地と渓流に6ヶ所であった.
4.サキシマスオウノキの分布と微地形の対応を調べた結果,渓流型に分布するサキシマスオウノキは,明らかに潮汐の影響を受けない河川上流域の水路底や崩壊地に分布し,湧水が流下する岩礫堆積地という共通点をもっていた.河畔型においては後背湿地や自然堤防上に分布し,感潮河川水や丘陵斜面から湧出した地表流の影響を受けていた.しかし一部は,氾濫原や感潮河川と接する斜面の崖錐や水路にも分布した.これら生育地は,地中を浸透した湧水や渓流水及び感潮河川水のような,流水の影響下にある立地であった.
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