【目的】私たちは衣服を購入する際、さまざまな懸念や不安(ファッション・リスク)を感じる。そのため、こうしたリスクを低減するために自身でいろいろな対処方法をとることになるが、販売員の助言を聞いて納得するのもそのひとつであると考えられる。販売員の言葉かけが私たちの購買行動を正当化する手助けをするのである。そこで、本研究ではファッション・リスクを低減させるためにはどのような販売員の言葉かけが有効であるのかを考察した。
【方法】調査は、大学生324名(男子130名、女子194名)を対象として、2007年11月~12月に集合調査法により実施した。調査内容は(1)ファッション・リスク(30項目、5段階評価)(2)販売員の言葉かけ(25項目、5段階評価)である。調査データは因子分析、t検定等の統計処理により解析した。
【結果】5段階評価の平均評点から、ファッション・リスク項目では被験者は着こなしに関する懸念を強く感じ、販売員の言葉かけではコーディネートの助言やほめ言葉等に強く影響されることが見出された。次に因子分析の結果、ファッション・リスクについては『着こなし懸念』『流行性懸念』『規範懸念』『品質懸念』他3因子が、販売員の言葉かけでは「雑誌に載っていた」等の『
社会的証明
』、「有名人が着ていた」等の『権威』、「似合っている」等の『好意』、「最後の1枚」等の『希少性』他2因子が抽出された。これらをふまえ、各リスク因子の下位尺度得点の高い人と低い人の言葉かけへの反応をみたところ、『着こなし』に懸念を感じやすい人は『
社会的証明
』の言葉かけに、『自己顕示』に懸念を感じる人は『権威』の言葉かけに対して反応する、等多くの関連が見られた。
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