近年、病院における医療の抱えるリスクが医療事故という形で取り扱われ、マスコミを含めて社会でも大きな話題となっている。
救急医療におけるリスクとして、様態が急激に変化する患者への対応がある。心肺停止への対応は、国際蘇生連絡協議会(ILCOR International Liaison Committee on Resuscitation)が定期的に示す骨子により5年ごとに作成され公開される蘇生ガイドラインがある。我が国では、日本蘇生協議会により2010年より公開されており、最新版はJRC蘇生ガイドライン2015として2015年秋に公開され、2016年2月29日に出版された。
一方で、心肺停止に至る前段階の急変は、多くの場合、反応の低下、すなわち意識レベルの低下などの脳神経系の機能低下により気づかれることが多い。ILCORは、病める心臓 ill cor を組織名の由来としており、脳
神経蘇生
を扱っていない。
我が国では、独自の取り組みとして、ガイドライン2010より「
神経蘇生
」を独立した章として作成・考案している。最新のガイドライン2015では、頭部外傷や spinal emergency を加えて脳
神経蘇生
としてさらに充実を図った。このJRCガイドライン2015の脳
神経蘇生
で示す内容は、文字通り脳神経系の蘇生、つまり脳神経系の急激な機能低下への対応のガイドラインに他ならない。
救急医療におけるリスクは、個人個人の病態の多様性により、ともすれば複雑系として取り扱われ、包括的なアプローチは困難である。このような場合、共通化が可能な部分は共通化しリスクを軽減する部分的アプローチを取り入れることで取り組みが可能となる。
脳
神経蘇生
ガイドラインを示しこれを共有することで、脳神経系のリスクを理解し救急医療に取り組むことが可能となる。
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