現在,地球環境は海洋汚染やオゾン層破壊など多くの問題を抱えている.なかでも,2018年に公表された気候変動に関する政府間パネルの特別報告書では,地球の平均気温は今後も持続的に上昇すると予測されており,地球温暖化は現在のみならず将来にわたってその影響が持続する問題とされている.地球温暖化による生育環境温度の上昇は,その環境に生育する生物の生殖機能を直接的にかく乱することが報告されているが,その一方で,内分泌かく乱化学物質(endocrine disruptor compound: EDC)による被曝露個体への生体影響にも作用を及ぼすことも報告されている.
一般に,EDCによる生体への影響には,被曝露世代への直接影響のみならず,直接EDCに曝露されていない子や孫などの後世代にも波及する影響,いわゆる後世代影響があることが知られている.そのため,EDCの作用に対する地球温暖化の影響の検討では,被曝露世代のみならず,この後世代影響に着目した検討も重要であると考えられる.本稿では,生育環境温度とEDCの後世代影響の関係性に着目したDeCourtenらの研究成果を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Allen M. R.
et al., “Global Warming of 1.5℃. An IPCC Special Report”,
IPCC, in press.
2) Miranda L. A.
et al.,
Gen.
Comp.
Endocrinol.,
192, 45-54(2013).
3) Luzio A.
et al.,
Aquat.
Toxicol.,
174, 22-35(2016).
4) DeCourten B. M.
et al.,
PeerJ.,
7, e6156(2019).
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