1985~95年に入院した54例の未治療の多発性骨髄腫患者の形質細胞の電子顕微鏡所見と臨床像を65歳以上の老年者 (20例; IgG型9例, IgA型8例, BJP型3例; 臨床病期I 5例, II 3例, III 12例) と65歳未満の若年者 (34例; IgG型16例, IgA型10例, IgD型1例, BJP型7例; 臨床病期15例, II 10例, III19例) で比較した. 老年者群と若年者群の5年生存率はそれぞれ41.5%, 60.5%で, 両群の生存曲線に有意差はなかった. 初回治療有効例は老年者群55%, 若年者群56%で, 両群間に有意差はなかった. 電顕的異常構造陽性の症例数を老年者群と若年者群とで比較すると,
細胞小器官
配列異常は老年者群に有意に多かったが, 他の異常構造陽性の症例数は両群間で有意差はなかった. 骨髄形質細胞中の各異常構造の比率と初回治療有効性を老年者群と若年者群で比較すると, 老年者群の治療無効群で濃染小体, ミトコンドリア内顆粒, multilamellar body の比率が有意に高く, 若年者群の治療無効群では
細胞小器官
配列異常, single sac loop like structure, ミトコンドリア内顆粒の比率が有意に高かった. 老年者群と若年者群の治療反応性や生存率に有意差はないが, 老年者群と若年者群では細胞の超微細構造が若干異なり, 電顕で細胞形態異常を個々に分析することにより老年者および若年者それぞれにおいて治療有効性を予測しうることが示唆された.
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