Pseudomonas aeruginosaは自然界に広く分布し,ヒト,植物および昆虫などの多くの生物種に日和見的に感染する細菌である。これまで,本菌において二成分制御系に関与する遺伝子
gacAが同定され,種々の病原性因子の発現を制御していることが明らかとなっている。そこで本研究では,
P. aeruginosaのカイコに対する病原性因子解析を目的として,野生株IFO13736を親株とする
gacA変異株,YC001 (
gacA::Gm
r) を部位特異的突然変異法により作出し,各種形質について親株と比較検討した。YC001株は運動性において,親株との差異は認められなかった。一方,本変異株の集落は親株と比較して小さく,リポ多糖および菌体外多糖生産性の低下が推察された。さらにYC001株をカイコ4齢幼虫体腔内に接種したところ,若干の病原力の低下が認められるものの,依然として強い病原性を保持していた。すなわち,一個体あたりの接種細胞数が10
4の場合,親株では接種48時間後までに全個体が死亡した。これに対しYC001株では,接種48時間後の致死率は30%であったが,72時間後までに全ての個体が死亡した。現在,YC001株の各種表現形質について解析中である。
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