家兎膀胱にV2腫瘍を移植して, 腫瘍, 非腫瘍部膀胱組織ならびに血清を経時的に採取し, 腫瘍の発育に伴う
1Hの核磁気共鳴 (NMR)
緩和時間
の変化を検討した.
緩和時間
はパルスFT-NMR分光計を用いて, T1 (縦
緩和時間
) は Inversion Recovery 法, T2 (横
緩和時間
) は Curr-Purcell-Meiboom-Gill 法で測定した. 腫瘍の成長, 動物の体重変化ならびに転移の発生状況から1週から4週までが早期から中期, 5週と6週が末期とした.
腫瘍T1は病期とともに徐々に延長する傾向をみせた. これに対して非腫瘍部T1は中期まで腫瘍のT1より短かったが, 末期になるとむしろ腫瘍T1より著しく延長した. 一方, 腫瘍T2は病期による変化を示さなかったが, 非腫瘍部T2はT1と同様に, 末期には著明に延長した. 非腫瘍部と対照群の
緩和時間
の延長は組織の水分含量の増加と平行した変化をみせた. これに対して, 腫瘍の
緩和時間
と水分含量の間には, 腫瘍成長の全期間を一括してみると有意な相関はなかった. しかし, 各病期ごとにみるとT1と水分含量とはよく相関した. これは腫瘍の
緩和時間
に影響する因子は水分含量だけでなく, 水と高分子の相互作用, すなわち水の構造化も少なからず関与していることを示唆している.
血清
緩和時間
は腫瘍末期に延長した. この変化は血清蛋白濃度の低下と一致しており, 血清
緩和時間
の変化が腫瘍に特異的現象とは考えられなかった.
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