【目的】呼吸介助手技が、生体に及ぼす影響については種々の報告があり、近年、MRIや超音波を用いた横隔膜運動の解析など、呼吸メカニクスを視覚的に解析する報告が行われるようになった.しかし、呼吸介助手技適用時の
肺実
質変化における報告は見あたらない.今回、我々は呼吸介助手技適用時の
肺実
質変化を、Dynamic MRIを使用し解析する試みを行ったので若干の知見を加え報告する.
【方法】対象は、心肺疾患のない健常男性1名とした(年齢38歳、身長165cm、体重66kg、BMI24.3).測定は、背臥位・左側臥位で、各々、安静呼吸時、右胸郭呼吸介助適用時の
肺実
質変化を、MRI高速撮像法にて撮像した.取得した画像のうち、横隔膜が最も下降している画像を最大吸気位、また、最も挙上している画像を最大呼気位とし、画像解析ソフトImage Jを用いて
肺実
質面積を求めた.
肺実
質面積の比較は、各肢位における右胸郭呼吸介助適用時の左右
肺実
質面積変化を、また背臥位・左側臥位での体位変化による
肺実
質面積変化についても分析した.尚、本研究は、本学倫理委員会で承認されたものである.
【結果】最大吸気・呼気位
肺実
質面積は、各々、背臥位安静呼吸時、右:136.1 cm2±7.9 、左:98.9 cm2±8.1、右:119.8 cm2±5.4、左:86.2 cm2±5.6、側臥位安静呼吸時、右:219.0 cm2 ±6.4 、左115.2 cm2± 9.0、右:203.0 cm2±6.0、左90.0 cm2± 4.9であった.呼吸介助適用時の最大吸気・呼気位
肺実
質面積は、背臥位で各々、右:169.5 cm2±19.8、左:147.8 cm2±16.2、右:138.4 cm2±6.7、左:106.1 cm2±8.4、側臥位で各々、右:237.8 cm2±5.5、左:133.7 cm2±11.8、右:213.7 cm2±6.1、左:98.8 cm2±6.6であった.各要因における多重比較検定を行った結果、背臥位介助右呼気、側臥位介助左吸気を除き、有意差が認められた(p>0.01).
【考察およびまとめ】
肺実
質面積は、吸気・呼気ともに、呼吸介助または、体位変換により増大し、臨床で行われる呼吸理学療法手技が有用であることが示唆された.また、左側臥位で下側左
肺実
質面積も同様に増加したことから、背臥位では側臥位に比べ、下側肺における重力の影響が大きいと考えられ、体位変換の重要性も示唆された.今回、呼吸介助適用時の
肺実
質変化をDynamic MRIを使用し解析する試みを行い、体位変換、呼吸介助が左右
肺実
質面積を増大させる有効な手技である可能性が示唆されたが、1軸での面積変化であるため、今後は、呼吸同期とともに多軸方向から面積を比較し、各々呼吸理学療法手技の有用性と、肺機能に及ぼす影響について、さらなる検討が必要である.
抄録全体を表示