非行などにより教護院に収容された少年30人の, 入所前と入所後との食生活を調査した。また, 入所以前の食生活を表すと考えられる入所直後の毛髪と, 入所してから7か月経過した毛髪のミネラルを測定した。入所前の食生活は偏っていたり, 不規則だったが, 入所後栄養管理された食事を規則正しく摂るように変化し, 入所前・後の毛髪分析結果に違いがみられた。これらを検討した結果, 以下のことが明らかになった。
1) 入所7か月後の毛髪中の必須ミネラル含量が入所直後より, (1) 有意に増加したものは, カルシウム, マグネシウム, 鉄, 銅, 亜鉛, クロム, マンガン, セレンの8元素であった。(2) 有意に減少したものは, ナトリウム, カリウム, コバルトであった。(3) 有意差がなかったものは, リン, モリブデンであった。
2) 入所7か月後の毛髪中の有害ミネラル含量のうち有意に減少したものは, 鉛, 水銀であり, カドミウム, ヒ素は差がなく, アルミニウムは有意に増加した。
以上の結果から, 入所後8種の必須ミネラルは有意に増加し, 2種の有害ミネラルが有意に減少し, 摂取食物と毛髪中のミネラル含量には密接な関係が示唆された。これらの変動は, 食事調査によって示唆される食生活の改善などによってもたらされたものと考えた。また, 入所後の対象者の精神活動状態にも変化がみられた。毛髪分析法は, 苦痛なく簡便にできるので, 栄養改善や予防医学の指標としても役立てることが可能と考えた。
本研究を行うに当たり, 調査に多大なご協力をいただきました更生施設の方々, 分析にご協力いただきました日本予防医学システム研究所舘野誠氏, 統計処理にご協力いただきました神奈川工業試験所内田弘氏, ご助言をいただきました日本大学医学部冨田寛教授に深く感謝いたします。
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