1968年4月から1983年3月までの15年間に, 慈恵大学病院で経腹的腎摘除術を行った77例の手術成績, 術中, 術後の合併症について検討した. 合併手術を行わず,
術中合併症
の生じなかった例の平均手術時間は212分, 平均出血量は983mlであった. リンパ節郭清の影響をみると, リンパ節郭清例の手術時間は283分, 出血量は1,290ml, 非郭清例のそれは168分, 704mlで, リンパ節郭清によって手術時間は115分ながくなり, 出血量は586mlましていた. 術前に腎動脈塞栓術を行った例の手術時間および出血量は, 非施行例と比べて差がなく, 腎動脈塞栓術は手術時間を短縮し, 出血量を減少させる効果はなかった.
術中合併症
は10例, 13.0%に生じた. 最も多い合併症は脾損傷と血管損傷で, 各3例にみられた. 脾損傷は本到達法における最大の潜在的欠点と思われた. 術後合併症は11例, 14.3%にみとめられたが, このうちの敗血症, 腎不全, 乳糜腹水の各1例, 計3例は術後1カ月以内に死亡しており, 術後死亡率は3.9%であった. 以上の成績より, 多くの腎細胞癌は経腹的腎摘除術で満足すべき結果がえられるが, 大きな腫瘍や肥満者では, 経胸腹的到達法がより適している例もあると考えられた.
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