失語症者の喚語能力およびその障害の構造的特徴を明らかにするための検討として,失語症者(Broca失語・Wernicke失語・失名詞失語)および健常者に意味カテゴリー語想起課題を実施し,次のような結果を得た.
(1)平均正想起語数では,失語全群・失語各群は健常群より有意に少なく,失語各群間には差がなかった.(2)正想起語総数に対する想起語の種類数の比率(
語種
類比)は,失語群間および健常群・失語各群間のいずれにも差がなかった.(3)全想起語と発話された最初の3語のそれぞれの高出現語は,失語各群・健常群のいずれでも共通するものが多かった.(4)全想起語の高出現語は,失語各群間で一定共通しており,それらは健常群の高出現語とも類似していた.
以上の結果は,意味カテゴリーの内的構造性は失語症者では比較的共通していること,それはまた,健常者の意味カテゴリーの内的構造性にも概ね類似していること,を示唆しているものと考えられた.
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