高校理科教育改善のため,石黒浩三氏が寄せられた論説(23号,139頁)に対し,「教育」という人工物を科学の対象として,研究する研究者の立場で考察された結果について,論説が与えられる.科学において,用いられるアナロジーは,対比される両者間の対応関係を明確にすべきである.石黒氏は「積み上げ方式」による「minimum essential」と「
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方式」による「maximum as possible」という原理で,内容の精選案を与えた.「教育」を考えるときその因子として,内容と方法以外に目的,主体,客体,場,時,内容の構造,実践などがあり,互に関連している.考察し,提案するときは,ただ内容と方法のみをいうのではなく,すべての因子について,それらの関連において為されねば無意味となる.「物理学」は,「物」の「ことわり」を探究する「学」で,各生徒が自ら自然を探究して,自分の頭の中に,自分の「物理」を創り,また自然に照らして修正し発展させるものと考えられ,そのように仕向けるのが教育である.既成の知識を暗記させるのではない.したがって暗記さぜる内容だけをどのように操作しても意味がない.教育関係者は,すべて常に教育に関する研究をしているべきである,その結果教師が自分で自分の教育を形成し,実行して,その評価にもとづき,生徒に照らして常に反省し,修正して進化させるものである.こういう教育の研究成果は,多種多様に発表されることが望ましい.
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