理科教育学研究
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原著論文
高等学校化学教材「酸」と「塩基」,「中和反応」取り扱いの問題点
長谷川 俊一
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2004 年 44 巻 2 号 p. 27-34

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抄録

高校化学では,アレーニウスとブレンステッドの2つの定義による[酸」と「塩基」を学習する。2つの定義には類似点があるため,理解するのに混乱をきたす場合がある。そのうち,「水のイオン積」や「pH」への応用につながるアレーニウスの定義をしっかりと理解させる必要がある。そこで, 「酸」と「塩基」, 「中和反応」の理解を把握するために高校生と対話を行った。その結果,以下のことが明らかになった。① 両定義の「酸」と「塩基」, また「酸」の定義におけるH+の相違について,理解していない場合があること。② アレーニウスの「酸」の定義において. H3OとH+の関係について曖昧に理解している場合があること。③ 「塩」の多様性についての理解が不足であること。④ 「酸性酸化物」と「塩基性酸化物」について,教科書によっては学習者が疑問をもつ記載になっていること。アレーニウスの酸の定義ではH3O+を扱い,ブレンステッドの定義でのH+と明確に区別させるべきで, これが学習者の誤解をなくす教授法である。「塩」はブレンステッドの定義に基づくため,その多様性は理解されにくい。教師は教える主体的存在であり,発問の厳選,学習者の誤解の予防,教科書の記載の加工・修正などを行い,発展的な授業を行っていく必要がある。

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© 2004 日本理科教育学会
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