1984年から1995年6月までに国立高崎病院外科で経験した原発性両側乳癌17例 (全乳癌の4.2%) について臨床病理学的特性, 治療法, 予後などを検討した.同時性は5例 (全乳癌の1.2%), 異時性は12例 (3.0%) であった.同時性と異時性の比率は1 : 2.5であった.同時性の平均年齢は59.0歳で, 異時性の平均年齢は第1癌48.0歳, 第2癌60.8歳であった.異時性の発生間隔では30年以上の症例を2例認めた.病期は同時性乳癌ではTis 1例, I期6例, II 期2例, III b期1例と早期のものが多かった。異時性では第1癌がI期6例, II 期4例と早期であったが, 第2癌はI期4例, II期5例, III a期1例, IV期2例と進行癌も認められた.組織型ではいずれも充実腺管癌, 乳頭腺管癌が多かった.リンパ節転移は同時性の2病巣 (20%), 異時性の10病巣 (42%) に認めたが, 両側とも n (+) の症例は異時性の1例のみであった.予後は良好で同時性は5例中4例が健存, 異時性では12例中7例が健存であった.一側乳癌術後は再発だけでなく, 両側性発生を念頭に置き, 対側乳房の検索, 定期的かつ長期の経過観察, 自己検診の実施が第2癌の早期発見上重要である.
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