高度経済成長期以来わが国大企業の支店・営業所の設置によって, 国家的都市システムの階層的結合関係は著しく強化された. しかし, 大型小売店の立地展開の場合には, こうした一般的な都市間の経済的結合関係とは別の非階層的連結構造が認められる. スーパー企業本社は, その企業の店舗網の中の最大都市には必ずしも設置されていないし, 店舗網は中心都市の経済圏や地域的都市システムとも一致しない. その立地展開が都市階層の順に行われることもなく,拡散理論における階層効果の原理にも従わない. スーパー企業にとっては, 大量に仕入れて直営店舗に配分したり, 各店舗をよく管理することが重要である. 百貨店はある一定規模以上の大きい都市に立地するが, 10以上の店舗をもつのは大都市圏にある若干の百貨店だけである. これらの百貨店の立地展開においても, 非大都市圏の百貨店やスーパーとの競合によって影響されるため, 階層効果の原理と完全には一致しない. わが国の都市システムにおける都市間の階層的・非階層的結合関係が, 将来経済活動の発展の中でどのように変化するかは, 都市システム研究にとって重要な課題である.
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