アレルギー疾患感受性遺伝子の発現レベルは症状の重篤性と相関するため,
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の抑制は有効な治療法となりうる.我々は,ヒスタミンH
1受容体(H1R)遺伝子が花粉症の疾患感受性遺伝子であることを証明し,その
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がプロテインキナーゼCδ(PKCδ)シグナルを介することを明らかにした.また,和漢薬苦参由来H1R
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抑制化合物(-)マーキアインの分子薬理学的研究から,花粉症に対する新規創薬ターゲットとしてヒートショックプロテイン90(Hsp90)を同定した.Hsp90阻害薬は鼻過敏症モデルラットにおいて鼻粘膜H1R
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亢進を抑制し症状を改善した.抗ヒスタミン薬はPKCδシグナルを抑制し症状を改善するが,抗ヒスタミン薬によりH1R
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がコントロールレベルにまで減少しても症状は完全には改善せず,花粉症の症状発現にPKCδシグナルに加えて第2の細胞内シグナルの関与が考えられた.スプラタストは抗ヒスタミン薬と同様症状改善効果を示すがPKCδシグナルを抑制せず,その症状改善効果は第2の細胞内シグナルの抑制によると考えられた.スプラタストと抗ヒスタミン薬エピナスチンの併用投与により,それぞれの薬物単独投与に比べ顕著な症状改善効果が認められた.スプラタストは鼻粘膜IL-9
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を強く抑制したが,エピナスチンはIL-9
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を抑制せず,スプラタストが第2の細胞内シグナルを介したIL-9
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を抑制することが示唆された.スプラタストはRBL-2H3細胞においてNFATシグナルを介したIL-9
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亢進や,NFATシグナルを介することが知られているJurkat細胞におけるIL-2
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亢進を抑制した.これらのことから,スプラタストがNFATシグナルを抑制することが明らかとなった.以上の結果から,PKCδシグナルとNFATシグナルは花粉症発症に関与する細胞内シグナルであり,両シグナルを抑制することにより顕著に症状を改善できることが明らかとなった.
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