セメントモルタルの耐酸性, 耐鹹性におよぼす各種混合材の影響について, 材齢6ケ月にわたり調べ, 次のような結果を得た。
(1) モルタルを7日間水中養生し, 1.8%H
2SO
4溶液に浸漬した場合, 混合材を含まぬポルトランドセメントの抵抗性が最も大であった。
(2) ポルトランドセメントの一部をスラグで置き換えた混合セメントモルタルは, 上記酸液浸漬で表面約3mmの厚さに膨脹性の変質層を生じ, 終に亀裂を生じ, その中に針状結晶を生成するようになる。
(3) X線分析で変質層はセメントバチルスから成り, 針状結晶は石膏であることを確認した。
(4) ポルトランドセメントの一部を, オパール質可溶珪酸を主体とする別府白土で置き換えた混合セメントは, ポルトランドセメントだけの時より2%MgSO
4+3%NaCl混合鹹水溶液に対する抵抗性を増した。
(5) ポルトランドセメントの一部をスラグで置きかえた混合セメントモルタルは, 上記混合鹹水浸漬の場合にも表面に著しい膨脹亀裂を生じたが, 内部は余りおかされなかつた。
(6) 可溶性アルミナを多く含む鉱素は, 添加材としてセメントモルタルの初期強度は低下しないが, 長期強度や化学的抵抗性には良い作用が認あられなかった。可溶性成分をほとんど含まない珪石粉末は強度, 化学抵抗性共に好ましいとは考えられなかった。
(7) 一般に化学的抵抗性を要する場合, 混合系セメントではその特徴を活かす意味で, 予め十分養生することが望ましい。
抄録全体を表示