患者は27歳,女性,酪農業.約2ヶ月前より右眼周囲に直径5cmの境界明瞭な同心円状の紅斑,丘疹を認め,KOH検鏡陽性,顔面白癬と診断した.真菌培養で白色短絨毛状,周囲は黄褐色湿性の放射状集落を分離,スライド培養,生物学的性状,顕微鏡的所見より
Trichophyton mentagrophytesと同定し,核リボゾームRNA遺伝子におけるinternal transcribed spacer 1 (ITS1)領域の塩基配列の解析により,同菌種の中のanimal type 1と同定した.Animal type 1はMakimuraの作成した系統樹上,動物の白癬の原因菌の一つである
Arthroderma vanbreuseghemiiに極めて近く,またヒトから分離された5株の
T.mentagrophytesとは少しはなれたところに位置する.従ってこの分離株の由来としては動物が疑われる.動物から感染したと考えられる白癬では,特異な臨床症状を呈するため,誤診されやすいので,注意が必要である.また,菌のより詳しい同定は,感染源を推測するのに役立つことが判明した.
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