【目的】 食品の嗜好価値は,味,色,香り,食感などの化学的・物理的特性によって決定される。一方,現代社会においては,加工品の普及により,簡便性・合理性・利便性が重視され,食の色彩は軽視される傾向にある。食における色の効果を大事にしてきた我が国には,和菓子という伝統的な菓子がある。練りきりに代表される茶席の和菓子は色や形などが多様であり,カロリーが低いなどの利点をもつ。さらに,色の配色など色彩に関して繊細な心遣いがなされており,食べる人の食欲に大きな影響を及ぼしていると考えられる。練りきりの色彩と食嗜好性の関係を明らかにし,色の美しさと多様性が特徴的な練りきりを食育教材として活用することで,栄養面・食文化面など多角的視点からの食育の遂行が期待される。本研究では,練りきりと色彩の連想関係に着目し,練りきりの色が幼児の食嗜好性や言語力の育成に及ぼす影響について検討した。
【方法】 調査対象は
静岡大学教育学部附属幼稚園
の年中(43人)と年長(46人),調査期間は2007年10月である。異なる着色食材で着色した練りきりについて食嗜好性を測定した。また,各色相から連想される食材について考える活動を設け,その練りきりの色が何の食材によるものかをクイズ形式で当ててもらった。
【結果および考察】 練りきりの色嗜好性に男女間で顕著な違いが見られた。男女とも,着色食材を知った前後で,選ぶ色の内容や順序に大きな変化は見られなかった。色を用いることにより,練りきりに対する嗜好性は増加した。練りきりの色を用いた連想ゲームは子どもたちに食べ物や食べ物の色に対する興味を向上させた。練りきりから連想される食べ物は年中より年長の方が多かった。
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